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2019.11.15

訪問診療ブログ『104歳のあなたから』

金谷 潤子
10月24日

『104歳のあなたから』

札幌生まれ札幌育ちの方。
理容師さんとなり、若き兵隊さんの整髪をして送り出したこともあったそうです。
踊りの師範や三味線の弾き語りなども嗜み、
ご両親やご主人さまの介護にも尽くされて来ました。

80歳になるとご自身で「ボケ防止の為に」と
地下鉄とバスを乗り継いでお一人で囲碁教室に通い始めました。
99歳で大腿骨骨折もされましたが回復。
102歳まで週1〜2回の囲碁教室を楽しまれていました。

その後、心不全増悪があり教室は残念ながら終了。
ご家族の介護負担もあり、施設入所と共に私にご紹介がありました。

0.5Lで在宅酸素が入ってましたが、ご本人は使いたくない。

外していても苦しくはないのですね。
それではやめましょう。

酸素吸入中も苦しくて1日何度か使っていたニトロ。
検討の結果、偽薬で良いのではと考え、
何度か乳酸菌の錠剤を代わりに飲んでいただきました。
それで十分落ち着かれているので終了しました。
複数の降圧薬や利尿剤もゆっくり整理しています。

「もう死にたい」が口癖です。
眠っている時にそのままお迎えが来る様に、ちゃんと私がお約束しますね。

おまじないに眠りを誘う抗うつ薬をほんの少しだけ。

最近はご体調も安定して足の浮腫も消失し、
随分お元気になりましたので、
月に数日〜半分ほどはご自宅に帰られています。

昨日は何と2年ぶりにデイサービスで碁を楽しまれました。
この神々しいお姿。
背筋が伸びます。

この方の人生の幕引きがどの様かは分かりませんが、穏やかに心地良い大往生となるまで、
どうか色々と教えて下さい。

104歳の方のご希望やご意見に私が何を言えましょう。
その生き様から学ぶことしかありません。

彼女が100歳の時にその凛とした有り様は人の心を動かし、NHKの取材を受けて番組となり、本にもご登場されました。
102歳でご体調を崩され重篤となっても、
生命の灯火はまた強さを取り戻して今に至ります。

忘れん坊さんの側面は有りますが、
碁を打つその姿は私たちなど足元にも及びません。

私たちが産まれた時に、立派な大人であった方々。
戦後の日本をしっかりと立て直して来て下さった方々。
感謝と学びしか無いのです。

2019.10.23

訪問診療ブログ『手のひら診察』

金谷 潤子
10月22日

『手のひら診察

高齢者の肌は乾燥していることが多いです。
かゆかゆになったり、すれて痛くなったり、赤くなったり。
時折、靴下を脱いで頂きカサカサの足全体に保湿剤をたっぷりと塗ってお話しながらマッサージすることも有ります。
他の先生の様に、医者らしい診察風景ではありませんが、私なりの情報をたくさん得ているつもりです。
足の冷たさや皮膚の張り、むくみ、乾燥具合、血管の怒張の塩梅。
ゆっくり触れながら、表情、会話の声色や目の輝き、選ぶ言葉やその出具合。
そんなの医者じゃないと思われるかもしれませんね。
人の生活の中で調子の良し悪しは、そんな些細なところに意外と現れてくるものです。

その上で血液検査だったり、慎重に触診、聴診をしたり、もっとヒアリングをしたり、場合によっては精査を病院さんにお願いしたり。

今日の方は、重症心不全と慢性肝炎がありますが、思い切って利尿剤を減らしている最中です。
少しだけお顔のしぼんだ感じが改善している様な気がしました。
採血の際(殆ど自分で採血します)の血管を刺した感触(弾力)は以前より力強く、血液流出の勢いも良好で少し安心しましたが、手が冷たくカサついていましたので、両手に保湿剤をたっぷりと塗るついでにお顔にも。
両手でお顔を覆って温める様に。

血液検査の結果はとても良好で思わずご家族にショートメールでお知らせしました。

※知らないうちにスタッフが写真を撮っていました

2019.10.23

訪問診療ブログ『おもいやり』

金谷 潤子
10月19日

『おもいやり』

忘れん坊さんの高齢女性の家でよく見かけるものがあります。
大切にお世話されているぬいぐるみ達

ある方はお布団をちゃんとかけて仲良く並べて寝かせてあげて。
ある方はご飯分けては口元拭いてくれてるから変色していて。
ある方は小さな生花を背中に乗せ、おめかしさせてくれて。
ある方は日差しが眩しくないようにタオルをかけてくれたり。

歳をとっても
忘れん坊さんになっても

ちゃんと忘れていない
優しさ
おもいやり
気遣い

身の回りの小さな可愛らしいものを
お世話している。
ぬいぐるみ達は家族なんですね。

人としてとても大切な
美しい心は
もしかしたら私よりあなたより
忘れていない

大事なことは皆
じいちゃんばあちゃんが教えてくれた。

じいちゃんばあちゃんが生きて
今のこの時代を作って来てくれた。

醜いことや
つまらないことを数えるよりも
美しいことや
すばらしいことを数えた方が
きっと色々なことが楽しく幸せに見えてくるのではないだろうか。

※この写真はこの数年でたまたま私が撮影していた全く違う高齢女性たちのお部屋です。(何枚かあったはずとiPhoneの中の1万枚から何とか探し出しました多分まだ何枚か有るのですが…)
とてもほっこりしてその都度思わず笑みがこぼれました。
皆さま、大分忘れん坊さんでした。

感じる心によっては、「認知症のおばあちゃん達のヤバい仕業」と寂しい表現になるのかもしれませんね。
それこそがとても不幸だと思うのですが。

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