ブログ

2019.09.17

訪問診療ブログ『また会える🍃』

金谷潤子
9月8日

8月30日に、熱いナース魂の訪看所長からの突然のSOSに二つ返事で駆けつけて始まった、癌末期の女性の訪問診療。
「看護師さんたちへ」というタイトルで投稿にもしておりました。

静かにお迎えが参りました。
穏やかに経過した10日間。

ご家族さまに、
「この安らかな道行きは全てご家族さまの思いやりと努力と寄り添い、
そしてご本人さまの懸命に生きてこられたそのお姿がきちんとこのようなお導きとなったと思います。」

と、お話いたしました。

「私は霊感も何も持ち合わせませんが、こうして在宅看取りを多くさせていただいておりますと、
亡くなった後の世界は有るのだと実感致します。
残念ながら私もご家族さまもいつか必ず死にます。
その時までのしばしの別れです。
必ずまたお会い出来ます。」

「早く会えるにはどうしたら良いのでしょう?」

「そうですね。
きっと、お迎えが来るまで一生懸命生きることではないでしょうか?
後、何年私たちが生きるのか分かりません。
ご家族さまが、あと5年、10年と◯◯様を失って生きていくことは長く感じるかもしれませんが、
きっと向こうの世界ではあっという間のことでしょう。
この世のお勤めを終えて、ご家族様が向こうに行かれた際には◯◯様は、ほんの僅か遅れただけなのねと笑顔でお出迎えして下さるのではないでしょうか。
私はそんな風に思うのです。」

数回の付き合いでしかない私のその場語りではありますが
ご家族さまには
瞬間を受け止める、
ご自身を納得させる、
何か一縷の希の言葉をおかけすることを心がけています。
私のことなど
私の言葉など
過ぎ去れば全て忘れて下さって良いのです。

何か少しでも救われて
少しでもホッとしていただきたくて。

皆さまくしゃくしゃの優しい笑顔で大きくうなづいておられました。
それは私の言葉にではなく、
おそらくご自分のお気持ちに。
しばしのお別れに。

毎日サポートして下さった訪問看護さん、
麻薬のパッチや坐薬を迅速にお届け下さり、
殆ど口から飲めなくなった際には粉薬を溶かして飲ませるためのスポイトもご用意して下さった訪問薬局さん、
最期の最期まで、お手洗いで排泄を済ませたい願いを叶えるために早急にポータブルトイレをお手配して下さったケアマネさん、
10日間のチームの思いはしっかりとかたちになりました
心から感謝申し上げます。

外は美しい黄昏れの空でした。
合掌。

2019.09.17

訪問診療ブログ『看護師さんたちへ』

金谷潤子
8月30日

この話も何度もしています。
私は看取りがしたくて訪問診療している訳ではありません。
自分の「いのち」へのこだわりをし尽くしたいだけなんです。

終末期の患者さんに必要なことは、医者からは丁寧な説明と十分な手の内。
主役は看護師さんの手厚いケアだと思っています。

訪問看護さんが、とことんケアに尽力して欲しい。
病状に振り回されることなく安心して専念できるように、
私はしっかりと薬剤コントロールと必要な説明をしておく。
その場でご家族や訪問看護さんが調整できるような、薬剤や処置の幅も十分持たせて。

当院は外部の訪看さん頼みであり、そして訪問看護さんたちにたくさん活躍して欲しいので、いつでも通常の在宅医療算定にしています。
その場をきちんとしつらえるのが私の役割だと思っています。

医者ばかりが脚光を浴びますが、最も大変でありがたいのは看護師さん達の働きです。
暑くても寒くても、丁寧に身体を拭き、排便の援助をし、傷の手当てもする。
ニコニコ優しい笑顔で、優しくお手当てしながら、患者さんやご家族の心の支えとなって下さる。

私は看護師さんたちをどれだけ生き生き活躍させることができたかを自分への評価としています。

看護師さんたちの働きはあまりにも地味で、決してドラマチックではありませんが、
まことの心の癒しとは実は目立たないことの繰り返しではありませんか?

特別なエステや南国旅行でのリフレッシュも素晴らしい癒しの時間とは思いますが、
大切な方からの日々の「ありがとう」の言葉、笑顔、これらこそがあなたの人生をしっかりと支えてくれると思いませんか?

自分を根っこからささえて、
芯から癒してくれることとは、
決して特別ではない
誰かのさりげない気持ち。
あたたかい言葉。
優しい存在。

いつも居るから特別に思わなくても、
パートナーや家族やペットの
日々の存在にどれほど癒されていることか。

これこそが大切な「緩和ケアの真髄」なのです。

当院は訪問看護を持ち合わせておらず、他の事業所さんのステーションと全て患者さん毎の新たなチーム編成で請け負っております。
やる気いっぱい、ナイチンゲール魂の新たな看護師さんと出会えた時の喜びはまた格別です。
そして、お迎えの近い方々の支えとなって下さることを願い、その為の計画を立て、実行していくことが私の「終末期医療」です。

今日はある訪問看護さんから、こんなメッセージが届きました。
初回訪問で介護保険の認定調査中に、訪問診療の必要性を確信してコッソリ連絡くれたのです。
こんな声に応えずにいられましょうか。
当院からは結構な遠方でしたが、メッセージを見た40分後にはご挨拶に伺いました。

2019.08.29

訪問診療ブログ『お迎えの約束』

金谷潤子
8月29日

超高齢の方の往診も随分と増えました。
往診を受ける境遇だからなのか、「もう長生きするのは嫌だね」という台詞も多く聞かれます。

「早くお迎え来て欲しい」
よく頼まれます。

ですので、私はいつも毎回お約束するのです。

「大丈夫ですよ。
いつか必ず、私が◯◯さんが知らずに寝ている間に、そーっとお迎え呼んでおきますからね。」

もう、それを言った時の、びっくり眼を見開いて喜ぶお顔を見せたいです。
お迎えを切望する方は皆大喜び。

少し忘れん坊さんで、毎回、「早くお迎え来て欲しい」と言われる方には、
私も毎回、
「寝ている間のお迎えの約束」をします。

皆さま、安心して喜んで下さいます。

そしてね、不思議なことに、そのうち「早くお迎え来て欲しい」と仰らなくなるんです。

何度かそんな問答を繰り返して、「お迎えは怖くない、寝てる間に来るようだ」と安心されたら、心をどこかでキリキリ縛っている紐が消えてくれるのかもしれません。

え?
嘘つき?

そんなこと無いんですよ。
ご縁のあった超高齢の方皆さまに、きっと穏やかなお迎えが来ると感じるんです。
本当ですよ。

1 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22
一番上に戻る