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2024.07.05

ファスティング−その1

ファスティング(Fasting)とは、特定の期間食事を制限または絶食することを指します。一般的には、水や飲み物の摂取は許可される場合がありますが、栄養素を含む食物の摂取を制限することが特徴です。
ファスティングは、その効能の一つであるオートファジーで大隅良典先生がノーベル賞を受賞したことから一般にも広く知られましたが、健康法として古くから行われてきた断食療法とほとんど同じものです。断食が体に良い効果があることは、現在でもキリスト教、仏教、イスラム教などいくつもの宗教で行われていること、古くはギリシャ時代から自然治癒力を高めるものとして行われてきました。ただ、メカニズムが不明だったのが最近の研究で徐々に明らかになってきただけです。

ファスティングのメカニズムには以下のことが考えられています。

1)インスリンと血糖調節: 食事を摂取しないことで血糖値が下がり、その結果インスリンの分泌が抑制されます。これにより、脂肪組織からの脂肪分解(脂肪酸とグリセリンの放出)が促進され、エネルギー供給源として利用されます。

2)オートファジーの促進: ファスティング中、細胞はオートファジーにより老廃物や損傷した細胞部位を分解し、再利用または排出します。これにより、細胞の健康維持や修復が促進されます。

3)ミトコンドリアの機能改善: ファスティングはミトコンドリアの機能を改善し、エネルギー生産の効率性を高めることが示唆されています。これにより、細胞のエネルギー効率が向上し、細胞の健康維持が促進されます。

4)炎症反応の減少: ファスティングは炎症マーカーの低下に寄与することが報告されており、炎症性疾患のリスク低減につながる可能性があります。

数年前のアメリカのアンチエイジング学会では、体を内側から若返らせる方法として、このファスティングが注目されていました。ただ、完全断食のファスティングは危険を避けるため医療者等の観察・指導が必要です。そのため、インターバルファスティング、プチ断食といわれるような一般人が安全に取り組める方法がいくつか開発されてきています。アメリカではすでにファスティングも健康ビジネスになっていて、FMD(fasting mimic diet)といった食品サービスも手軽なファスティング法として始まっています。

2024.06.21

朝すっきりと起きられますか?−鉄欠乏は、多彩な愁訴と関係−

鉄欠乏性貧血による症状は実に様々です。具体的には、寝起きが悪い、疲れやすい、肩こり、湿疹、頭痛、風邪を引きやすい、髪が抜ける、注意力が低下、イライラ・神経過敏、歯茎から出血、アザ、動悸息切れがする、むくみ、爪が変形、割れやすい、食欲不振、口角口唇炎など、多彩な愁訴に関係しますが、慢性に経過する鉄欠乏は自覚症状に乏しいのが特徴です。
 現代ではライフスタイルや環境の変化によって食物からの鉄の摂取量が減少しています。さらに、成長に応じて鉄の需要は増大、過度な運動でも鉄が失われます。女性はさらに、月経血からの喪失、妊娠、分娩で鉄の需要が増加します。子宮筋腫や悪性腫瘍などによる出血量の増加に伴い、需要量が増加します。
 病院で処方される鉄剤は非ヘム鉄です。鉄は胃酸により、鉄イオンに変化してから吸収されるので、胃酸の分泌が低下している人はヘム鉄の補給が適しています。
 鉄以外にも栄養バランスの乱れは様々な不定愁訴を引き起こし、病気の原因にもなります。血液検査によって、ご自身の体の状態を知り、適切な栄養素の補給を行なうことによって、愁訴の改善だけでなく、身体症状を含めた全身状態の改善も可能になります。

2024.06.14

最新の健康医療

健康は極めて大切だということに反対する方はいないでしょう。では、どうやって健康を維持するかは考え方が様々で、まめに健康診断をして早期発見早期治療に努めるという方もいれば、様々な情報を入手して病気の予防に努めるといった方、また、全て運に任せて好きなように人生を謳歌するといった方もいるかもしれません。
 高齢化に伴い、我が国でも癌患者が増加しています。しかし、アメリカでは近年、癌による死亡はむしろ減少しており、日本とは逆の現象が起きています。これは、早期発見、早期治療の成果というよりはアメリカでは国民に「予防医学」が広く浸透していることが大いに関係していると思われます。予防医学といってもその方法はいろいろありますが、アメリカでは最近「自然療法医」ND(naturopathic doctor)という資格が認められる州も増えてきており、多くの癌患者などが彼らによる代替医療を受けています。
 代替療法とは、厳密には「通常医療の代わりに用いられる医療」をいいますが、単独で病気の完全治療効果を得ることは少なく、実際には通常医療と併用され、統合医療といった形で提供されることが多いです。「人はその人が食べたものでできている」。栄養療法は「医食同源」といわれるように極めて有効性の高い自然療法の一つです。高濃度ビタミンC点滴療法はノーベル化学賞を受賞したポーリング博士が報告して以来、癌に対する代替療法として広く用いられており、近年では、癌以外に様々な慢性疾患の治療に使われています。ビタミンC以外の栄養を効率よく摂取する方法として様々なサプリメントを用いる栄養療法は、「オーソモレキュラー療法」といった形で、カナダの精神科医ホッファー医師によって進められ、精神疾患を薬物を使わずに治療する方法として認められています。(http://www.orthomolecular.jp)
 キレーション療法は、動脈硬化をはじめ、様々な血流障害に起因する病気の治療に用いられ、心筋梗塞に対してもバイパス手術を選択しない場合の代替療法として有効性が報告されています。
 現代医療が、人類に長寿を当たり前のものとしてくれたことに疑いの余地はありません。しかし、本当に必要な健康寿命の延長にはそれだけでは不十分です。健康寿命の延長には、予防医学に配慮した新たなアプローチが必要と考えます。

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