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2019.08.21

訪問診療ブログ『人生劇場、大女優の旅たち』

金谷潤子
8月10日

お盆休み、たくさん懐かしい方々が身近にお越しです。

ある高齢女性。
癌末期で病院受診しそのまま入院、絶食となり点滴だけが続けられていましたが、治療はもう不可能ならばと娘さまが在宅看取りを決心されて1週間前にご自宅退院となりました。

帰られてからは点滴はもちろん中止し、
すっかり浮腫んでいる全身から少しでも水が引けてくる様にステロイドと利尿剤、胃薬はお飲みいただきました。

痛みの強い癌であるにもかかわらず、鎮痛薬はフェントステープ1mgのみで穏やかな日々が始まりました。
果物を数口、ササゲの煮物、カレイの煮付けなど少しずつ毎日。
大方は眠っていますが、目覚めている時には子供さまたちとたくさんお話されたそうです。
亡くなったご自身のお母様が頬ずりして来られ、白狐さまも現れたそうです。

道行きの案内役として来られたのですね。
お迎えは怖いですか?と尋ねると
静かに微笑まれて首を横に振りました。

訪問看護さんに便処置をしていただき、身体をきれいに拭いて頂いたりする中、呼吸は少しずつ低下していきました。

「ぷくぷくに浮腫んだ姿で旅立つのは嫌よ」と、
まるで排出することに魂を込めているかの様にステロイドと利尿剤に良く反応され、
毎日1500mlほど排尿がありました。
ゾウさんの様にパンパンだった足もほっそり。

しかし、昨日いよいよ呼吸が怪しくなりました。

「お母様、おきれいで身だしなみに気を遣われる方でしょうから、このところの暑さもありお風呂に入りたいのではないでしょうか?」
娘さまもご本人さまも、二つ返事でご希望されました。

「ケアマネさん!◯◯さんにもう時間の余裕はありません。
どうか最期にお風呂の願いを叶えてあげて下さい。」

ケアマネさんに訪問入浴依頼のお電話入れたのは昨日の15時過ぎ。

お盆連休直前の無謀な要求に何とか応えて下さり、
お手配していただいた今日午前中の訪問入浴。

入浴介助スタッフの男性に恥じらいを見せながら、でも気持ちよさそうに髪も身体もきれいに洗っていただいた後、30分ほどでお迎えが来ました。

その昔は女優さんへの夢をお持ちだったそうです。
細くなった足にはきれいにペディキュアが施され、訪問看護さんのお手伝いで素敵なお召し物にお着替えされました。

往年の女優さんの大往生の様ですよ。
たくさんお声かけさせていただきました。

息子さまも娘さまも泣き笑いの中、幸せなお看取りとなりました。

合掌。

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