ブログ

2019.03.13

一億総老化時代

日本は今、「2025年問題」といわれるように、団塊の世代が後期高齢者(75歳以上)に達することにより、介護・医療費等社会保障費が急増する、という重大な問題に直面しています。簡単に言うと、高齢者人口は約3,500万人、約1/3が高齢者になります。これは、えらいこっちゃというわけで、マスコミ報道などで騒がれているのはご存知の通りです。

健康なうちにこそ、将来のことを考えておくのがいざという時に慌てない秘訣です。北海道は、全国的に見ても病院で亡くなる人の比率が多いのですが、最近は最期を自宅で迎えたいという方も増えており、在宅医療が注目されてきています。私どものクリニックでも在宅医療を担当しておりますが、一口に在宅死といってもその形は様々です。治療手段がないということで病院から来られた方や、自ら積極的に在宅医療を選択された方もいます。前者はどちらかというと病院での治療の延長線上に在宅を選んだ方、後者は治療法も含めて自分で選択しようとする方です。印象的には安らかに死を迎えられるのは後者のタイプの方が多いような気がしますが、どちらも驚くほど安らかに最期の時を迎えられます。私が病院で経験した集中治療室などでの死とは大きく違います。

 ただ、死ぬ前に私たち一人一人が心がけておく事があるのではという事で、本にしてみました。興味のある方はご一読下さい。Kindle本で100円です。

『金谷憲明先生と語る 心と体の栄養学: 日本初の日帰り手術専門クリニックから、在宅医療とアンチエイジングまで』

http://www.amazon.co.jp/dp/B01A76PT8E/ref=cm_sw_r_fa_dp_ULALwb0KYF4AS

2019.03.12

北海道は癌になりやすい?

2人に1人が癌になる時代と言われています。日本は名だたる長寿国で、医療レベルも高いのに何故でしょうか。長生きになったため、他の病気で命を落とさず癌くらいでしか死なないという捉え方もあります。しかし、癌の死亡率には地域差があることはあまり知られていません。
 2017年の国立がん研究センターの報告では、東北・北海道の癌死亡率が男女共に全国に比べて高いのです。これは、どのように考えたら良いのでしょうか。最も低い長野県に比べ、北海道は1.5倍程です。北海道は、人口に対する医師数の面では全国で平均的なレベルであり、特に医療が受けにくい環境ではありません。手術に関しては、麻酔科医がきちんと術中管理をしている病院も多く、安全に手術が行われています。
 同様の傾向は、北半球の地域に多く見られます。他に、北半球に多いと言われる疾患は、高血圧、インフルエンザ、うつ病などです。これらの地域に共通していることは冬が長く、日照時間が短いことです。日照時間が短いと体内のビタミンD濃度が低下します。ビタミンDの合成は皮膚で行われ、その合成には紫外線が不可欠です。したがって、日焼けを避ける今日の生活様式は北半球ではビタミンDの低下がさらに酷いことになります。ビタミンDは、免疫、Ca代謝に大きく関わっています。すでに活性型ビタミンDは骨粗鬆症の薬として使われています。
 食品としてビタミンDを多く含むのはレバー、鮭などです。きのこも天日干しになったものはビタミンDになります。キノコも鮭も秋の恵みとしてよく知られたものです。そう考えると、昔の人は誰にも教えられずに予防医学を実践していたことになります。最近の世界の医療のトレンドは最先端医療の追求よりは予防医療の推進です。予防医療の観点からは、ビタミンDをサプリメントで補充することが勧められています。1日5,000単位以上のビタミンDの摂取をお勧めします。

2019.03.12

訪問診療ブログ『生きる』

金谷 潤子

3月5日

在宅医としての私がいつも感じていること。
在宅医療は病院医療がそのまま家でも受けられるということでは無いということです。
ご本人の生活を安定させる為の工夫を体調管理も含めて検討する中の医療的側面を担うもの。
…とでもいいましょうか。
血液検査や画像診断には反映されないことも時には治療対象となります。
なんとなく元気が無い。
歩き方がいつもと違う。
食べる量が少ない。
そして、治療方法も薬剤とは限りません。
環境を変えたり、
接し方を工夫したり、
食べる時間を変えたり、
リハビリをしたり、
目標を考えたり。
私は在宅医療らしい医療の在り方をいつも考えます。
病院と同じ=安心
という考え方を変えるために。
お迎えまでの時間をどう過ごすかを考えることも大切な在宅医療の担いです。
高齢者
癌の末期
難病の終末期
であることは、積極的医療(或いは延命治療。どちらの表現も嫌いなのですが…)を受ける資格が無いでしょうか。
90代後半の癌末期の男性。
お弟子さんもたくさん居られる書家でいらっしゃいます。
ご縁があった際にはもうお迎えまで間もないという状態でした。
ご本人と何度も話しました。
彼はまだまだやりたいことがある、
まだ生きたい。
忘れん坊さんが進んでいてもきちんとお気持ちは固まっていました。
少しでも長く生きたい、
と、はっきり私に言いました。
喉に大きな癌の転移があり、飲み込みはかなり難しくなって来ています。
どんな治療を望みますか?
話ができなくなるのは嫌だ。
だから、喉に穴は開けたくない。
でも、少しでも生きたい。
私は高齢者や終末期の方の高カロリー点滴はいつもはあまり考えません。
けれどもこの方の強い意思を確認しましたので、それを伝える内容でお手紙を書き、CVポート造設依頼を病院にお願いしました。
消化器と外科のドクターにご理解いただき、「なるべく入院したくない」という希望も叶えて日帰りで造設して下さいました。
この方には最小限の高カロリー輸液をしています。
それ以外に少しだけ食べやすい好みのものを口からも食べて頂いています。 (このさじ加減が病院とは違うと思っています)
痰の吸引も欠かせません。
彼は痰の吸引を継続してでも、点滴や口から食べることを望まれました。
24時間看護体制の施設の自分のベッド周りのスペースで、調子の良い時には何枚も書を嗜まれます。
かなり痩せてしまいましたが、ベッド横に設置した書道用の机に向かう凛としたお姿からは教えられるものが多くあります。
お弟子さんにとっても、終末期のこの方の作品からの学びがどれだけ尊いか。
この方のこの姿は延命でしょうか?
若い方の生には意味があり、
この方の生にはもはや意味はありませんか?
生きようとするのか。
終うお支度をされようとするのか。
お一人お一人全て違う
そのいのちの灯火の行方が
まだ小さくとも最後まで燃えていようとしているのか
そっと消えて行かんとしているのか
しっかりと見定める。
その寄り添いには
人として生きる為に大切な全てが
必ず生まれるでしょう。

※写真は数日前にこの書家の書かれた「生」の字です。
この字からほとばしる「生きようとするエネルギー」に畏敬の念を抱きます。

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