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2019.07.24

訪問診療ブログ『在宅看取りの立役者』

金谷潤子
5月25日

今朝早くにご自宅でのお看取りがありました。
ご家族多くに囲まれての旅立ちでした。
メディアでも多く取り上げられ、高齢者の療養先病院ベッド数が間に合わなくなっていることもあり、在宅や施設看取りは確かに増えてきているのですが、一般の理解に対して少し違和感を感じることもあります。

在宅看取りで一番大切な鍵を握るのは看護師さん(多くは訪問看護師さん)だと私は思っています。
いつも医者がヒーローのように思われますが、
実際に患者さんの元に頻回に出向き、
身体を拭いたり、
点滴をしてくれたり、
排便の手助けをしたり、
お風呂に入れてくれたり。

その生活に溶け込み、優しい声かけや勇気付けや労いを添えながら、身体のケアをしてくれる。
それは心のこもった、旅立ちの支度のお手伝いです。

この話は何度も話していますが、
医者は看護師さんが安心して「患者さんの看護」に専念できるように、
頭をひねり尽くして、最大の安心を引き出すための薬や処置や治療計画を立て、
適切なタイミングでご家族やご本人に十分な説明をする役割です。
医療は医者だけで行われるものではないのです。

ドラマや映画や本などを見ていると、医者が医療の主役に思われるかもしれません。(紹介の仕方としては医者を主役にして語らせた方が確かに分かりやすいのですが)

けれども在宅療養に於いては、その方に施される「治療」は病院で行われるものに限らないのです。

「人が人を癒やすために考えうる全ての方法」が、「住み慣れた場所」では繰り広げられるのです。

音楽や言葉や生活音や人の手の温かさや、小さな思いやりや思い出の味や、書き尽くせない色々。

ですから、医者は終末期を迎えている方の心身を整える(痛みや苦しみが無くて安心して眠ることができる…という基本をきちんと整える)ことに徹すれば良い。

ご家族や近しい方々が、旅立つ方のお手伝いを安心してできるようにしっかりと先導を取るのは看護師さんだと私はいつも考えています。

今朝も私が死亡診断を終えると、訪問看護さんお2人はエプロン姿で患者さんにずっと話しかけながらお身体を丁寧に拭き、お好みのお召し物にお着替えをして下さりました。
泣き疲れているご家族にも、絶妙のタイミングでそれらの手伝いをさりげなく導き、ご本人のエピソードに花を咲かせていきます。
そこには愛があり、人の優しさが溢れていました。

私は一文字一文字死亡診断書を書きながら、その、悲しいけれども暖かい「プロフェッショナルな儀式」に感謝と感動を感じていました。

素敵な訪問看護さん、施設看護師さんが増えることで、福祉介護の方々と医療を結びつける橋が大きく強くなっていく未来であって欲しいと願います。

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