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2022.06.23

訪問診療ブログ『ある日、あるご家族と』

『ある日、あるご家族と』
◆私
「こんにちは。
お父様のご体調いかがでしょうか?
薬剤を変更して数日とても良く、
ご体調見てまた増量しております
元々の病院さんから
お父様の肺機能は非常に末期的で
ご自宅での生活は難しいとの
申し送りでした
それを踏まえると、
お父様に残されたお時間は
それほど長く無いかもしれません
今を少しでも不快無く
楽しく過ごしていただくことが
最優先で良いでしょうか。
改めて再確認でした」
◆奥さま
「お休みの日にありがとうこざいます
今日は盆栽の仲間が来てくれて、
楽しそうに、話しています」
◆息子さま
「先生、いつもありがとうございます
本人はいつも口癖のように
「今は自宅にいるのに、入院と変わらない安心感だな
先生は常に気にかけてくれているし、
看護師さんやリハビリの先生も来てくれる
うまい飯も食えるし盆栽もいじれる」と、いまの生活が送れることを
とてもありがたく感じています
先生からの治療方針のご説明、
薬のことなど、
全て受け入れているようです
今後ともよろしくお願いします」
◆娘さま
「先生ありがとうございます
わたしは正直、
前回の入院を終えた時、
次はもう覚悟が必要と思っていました
入院するといきなり食べなくなり、
みるみるうちに
衰えていったからです
父は、もう病院にはいたくないと
何度も言ってました
コロナ禍で面会も叶わない中、
孤独も耐えられなかったんだと思います
父は今朝、私に
棚に入っている石を出して欲しいと
頼んできました
言われた通りに出すと、
今日くる盆栽仲間にあげるんだ、と
少しずつ処分したい、と
言っていました
いろいろと父なりの
思いがあるんだなと
少し寂しい気持ちにもなりました
こういうことを受け止めていくのは、
楽ではないな、と感じます
けれども、
少しずつその機会を
いただけているのは、
ありがたいのだと思います
私は今まで通りに
父や母との時間を
過ごしていくつもりです
今後ともどうぞよろしく
お願い申し上げます」
◆私
「ポロっと涙がこぼれました
切ないですね
でも人は必ずこの世のお別れが来ます
大切な石の形見分け
お父様なりの終い支度、
尊い行いだと思います
ご家族さまとお父様の
大切なお時間を
できる限りのサポートを携え
チームで伴走したいと思います
この世は修行なんだろうと
いつからか考えるようになりました
お辛い思いをした方は、
向こうで労いを受けて
ゆっくりされるのだと思います
生きることはとても儚くて、
だからこそ
とても尊いのだと思います
私は、今日が最後でも
悔いは無いと、
毎日生き切る気持ちで
床に着きます
昔は、物や若さや見た目に
固執しましたが
やっと大切なことが見え始め
それらへの執着は薄れました
人との出会いで
自分の心が磨かれることが、
幸せで喜びです
◯◯家とのご縁でも、
たくさんの学びをいただいてます
ご一緒におられるお母様にとって
ご不安少ない日常が少しでも長く続き、
穏やかでさりげない、
お父様のご卒業であることを願います
今後ともどうぞ宜しくお願いします」
※連休前半、お遍路2巡目に数日行って来ました
皆さまの穏やかな道行を願い
静かな山寺で無心になると
少しずつ自分が透き通って行く気がしています
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