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2021.02.26

訪問診療ブログ『老いが悪いものという洗脳』

『老いが悪いものという洗脳』

女優さんはシワ、シミの無い美しいお顔立ちだけが魅力ではありません。
年齢を経てシワと表情に刻まれる優しさや貫禄はピカピカの若さには生み出せない価値です。
シワやシミをまるで悪いバイ菌の様に「無くさないとならないもの、醜いもの」の様に一体誰が煽るのか。

いつのまにか「老い」は「醜くて何とかしなければならないもの」と表現される様になってしまいました。
それは化粧品や健康食品や病院や高齢者産業などに「老い」を独占担当させる為です。
「老い」が「マイナスなこと」だと皆が思えば、
そこでお金儲けできるからです。
(注:お金儲けは悪ではない。洗脳を良くないと言っているだけ。高齢者も共に経済を回していける仕組みをその賢い頭脳で編み出そう)

そうして「老い」を「残念な悲しいこと」だから、
「なんとかしなければならないんだ」と皆が洗脳される様になってしまったんです。
老いて何かができなくなっても、知恵者としてご意見番となったり安心して子供を見てもらえたり、そんな大家族の中での役割も少なくなりました。
高齢者夫婦だけの世帯では、お互いに不安を抱えて生活しないとならないでしょう。
昔の様な自然な見守りのもと、
お互いに助け合う中で、老いは尊く、「自分たちの次の姿」と学ぶ機会も少なくなりました。

そうすると、「醜い」「面倒」「心配」「危険」と矢継ぎ早に追い込まれる高齢者は益々自分の価値を見出せずに混乱、苦悩していきます。

老いることはスバラシイ。
私は奢り、無知で愚かだった昔になんてちっとも戻りたくない。
シワもタルミもシミも何も怖くない。
ニコニコ笑うことこそがスバラシイ。
高い化粧品や皺伸ばしに専心するより、笑顔で過ごす心磨きが必要です。

ピカピカの肌も髪も死んだら灰になる。
どれだけ集めたモノもカネもあの世には持っていけない。

転んでも仕方ない。
危険でも仕方ない。
どこにも危険はあります。

お城みたいな高齢者住宅
脳の萎縮や行動異常を宣告する認知症医療
老いることは「みっともない」から「なんとかしなきゃ」と煽るマスコミ
皆で寄ってたかって「タイヘンダー」

本人は普通の人間なのに
なんとかしないとならない「困りもの」に仕立てられていく
自分は迷惑な存在
醜くくて役立たず
そんな窮地に追い込まれ
そして脳は寂しさと情けなさで溢れて
光を見出せなくなる

そんなのおかしいって

シワ万歳
忘れん坊、どんとこい
あちこち痛いのも、体力無いのも
懸命に生きてきた証拠

切ない病気になったなら、
痛みは取ってもらおう、夜は眠らせてもらおう
後はなる様にしかならない
それもまたこの人生
死んだらまた違う役割が待ってる

私は父を診るために在宅医となり、3年前に看取りました。
父は脳梗塞後に要介護5となり、色々できなくなりました。
けれども私は老いても自分の置かれた環境や立場に馴染もうと努力葛藤する父に多くを学びました。
死んだ後はもっと身近に感じます。
見守ってくれているのでしょう。
できなくなるのでは無い!
皆、人生を歩んでいるのです。
写真は父が生前要介護5で右手だけで作り上げた仏様です。
これは驚くほど父に似ています。
若い父には作ることはできなかったでしょう。
万感の思いが込められている仏様像です。

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